夜、布団に入ってから気づく音があります。どこかの犬の鳴き声。遠くを走るバイク。壁の向こうの話し声。一度気になると、そこから眠れなくなることもあります。
「窓を二重にすれば静かになる」と聞いたことがあっても、「うちの音は窓で変わるのか」は分かりにくいものです。実は、音は種類によって、窓で変わりやすいものと、変わりにくいものがあります。窓から入っていない音もあります。
このページでは、音の「種類」から考えます。どんな音なら窓まわりで変えられる場合があり、どんな音は窓では変わらないのか。音の入り口の見つけ方、自分でできる対策も整理します。音全般の考え方は防音の基本ページにまとめています。
音の「高さ」で、窓の効き方は変わります
音には高い音と低い音があります。高さは周波数(Hz)という数字で表します。数字が小さいほど低い音です。
窓の遮音は、どの高さの音でも同じように効くわけではありません。サッシの遮音性能を表す「T等級」(T-1からT-4の4段階)は、実験室で測った125Hzから4kHzの帯域の値で決まります。つまり、等級が評価しているのは、およそこの範囲の音です。
出典:日本建設業連合会 技術研究部会 音環境専門部会「T等級」(用語集、2019年11月)
一方で、100Hz以下の音は「低周波音」と呼ばれます。環境省のQ&Aでは、周波数20Hzから100Hzの低い音と、20Hz以下の空気振動をまとめて低周波音と呼ぶと説明しています。
ここで押さえたいのは次の点です。
- 窓の等級は、125Hzより低い音を直接の評価対象にしていません。
- 二重構造(二重窓や複層ガラス)には、特定の高さで音が通りやすくなる「共鳴透過」という現象があります。
日本建設業連合会の用語集には、その例が載っています。5mm+空気層6mm+8mmの複層ガラスでは共鳴透過の周波数が280Hz、5mm+空気層50mm+8mmの二重ガラス構造では96Hz、空気層200mmでは48Hzとされています。同じ資料で、共鳴透過の周波数付近では遮音性能が下がり、単板ガラスより低い値になる場合があると説明されています。空気層が広いほど、共鳴透過の周波数は低くなります。
出典:日本建設業連合会 技術研究部会 音環境専門部会「共鳴透過、共鳴透過現象」(用語集、2019年11月)
まとめると、窓は音の高さによって効き方が変わります。低い音は、窓ガラスやサッシだけでは変わりにくい場合があります。
音の種類ごとの見立て
音の高さの成分は、音源や距離、周囲の建物によって変わります。同じ「犬の鳴き声」でも一概には言えません。そのうえで、一般的な見立てを表にしました。あくまで目安です。
| 気になる音 | 窓まわりで変わる可能性 | 見立ての理由(一般的には) |
|---|---|---|
| 犬の鳴き声、人の声(屋外) | 窓を通して入っている場合は、やわらぐ場合があります | 窓の隙間やガラスを通って入る音が主なため。群れで鳴く、長く続くなど、気になり方は個人差が大きい |
| バイクや車の走行音 | 窓の種類・向きで変わります | 走行音には低い成分も含まれます。窓を閉めても低い響きが残る場合があります |
| 夜の話し声・足音(屋外、廊下) | 窓を通る分は変わる場合があります | 廊下や階段側のドア・換気口からの経路も確認が必要です |
| 隣の部屋の声・生活音 | 窓では変わりにくいことが多いです | 壁・床・天井を通る音は、窓の対策では減らせません |
| 上の階の足音・物音 | 窓では変わりません | 床や天井を伝わる音のため |
| エアコン室外機の音 | 場合によります。設置場所の対策が先です | 低い響きが残ることもあります。置き場所や向きの見直しが効く場合があります |
| 近所の工事の音 | 時間限定のため、窓の工事は割に合わない場合もあります | 振動を伴う音は窓以外からも伝わります |
沖縄では鉄筋コンクリート造が多く、壁そのものは音を通しにくい建物です。令和5年住宅・土地統計調査(沖縄県結果の要点、令和7年3月31日)では、沖縄の住宅の非木造は96.5%、鉄骨鉄筋コンクリート造は93.8%でした。その分、壁や床を通る音より、窓や換気口、玄関ドアといった「開口部」から入る音が目立ちやすい場合があります。ただし、建物ごとに事情は違います。
「基準値」と「室内で聞こえる音」は別です
環境省の「騒音に係る環境基準」には、地域の類型や道路に面しているかどうかで決まる基準値があります。一般地域のA・B類型は昼間55dB以下・夜間45dB以下、道路に面する地域のA地域(2車線以上)は昼間60dB以下・夜間55dB以下、などです。
ただし、この基準は「屋外の音が基準値を超えているかどうか」を見る物差しです。「お宅の室内で、その音がどう聞こえるか」を直接表す数字ではありません。
同じ環境基準には、窓を主に閉めて生活していると認められる場合に、屋内へ透過する音で評価する特例もあります。その値は昼間45dB以下、夜間40dB以下です。また、航空機騒音、鉄道騒音、建設作業騒音には、この環境基準は適用されないとされています。
出典:環境省「騒音に係る環境基準」
ここで気をつけたいのは、基準値を満たしていても「聞こえる音」が気になる場合があることです。静かな夜は、小さな音でも際立ちます。逆に、基準値を超えていても、あまり気にならない人もいます。数字だけで「我慢するしかない」と決める必要はありません。
音の入り口を見つける、手軽な確認方法
窓を工事する前に、音がどこから入っているかを確かめると、無駄がありません。次の順で試してみてください。
- 窓を閉め、カーテンも閉めて、気になる音を聞きます。
- 窓を開けて、同じ音を聞き比べます。窓を開けたときに大きく変わるなら、窓まわりの経路の影響が大きい場合があります。
- 窓を閉めたまま、窓の枠、換気口、玄関ドアの近くで耳を近づけてみます。音が強く聞こえる場所が入り口です。
- 窓のない壁際、床に耳を当てて聞き比べます。壁際や床のほうがはっきり聞こえるなら、窓ではなく建物を伝わる音の可能性があります。
- スマートフォンの騒音計アプリで、場所ごとの数値を比べるのも一つの方法です。アプリの数値は参考値で、正確な測定ではありません。
窓の気密が気になる場合は、日本サッシ協会の資料にも、気密性が良いと内・外部騒音の遮音性が良くなるという説明があります。窓の閉まり方、パッキンの傷み、ずれも確認しておきたい点です。
出典:日本サッシ協会「窓の性能とJIS基準について」(資料。公表年月はPDF上で確認できず)
今日からできること
窓の工事をしなくても、できることがあります。
- 隙間を見直す。窓の閉まり具合、パッキンの劣化、換気口の位置を確認します。
- 厚手のカーテンを閉める。音の入り方がやわらぐ場合があります。ただし、効果は窓の種類や音の高さで変わります。
- 寝る場所を変える。音の入り口になる窓から離れた壁際へ、ベッドや布団を移します。
- 家具を壁際に置く。隣室側の壁に本棚を置くなど、音の伝わり方が変わる場合があります。
- 音を紛らわせる。小さな音を流すと、気になる音の目立ち方がやわらぐ場合があります。
- 耳栓を使う。就寝時の応急策として有効な人もいます。
- 近隣への相談。犬の鳴き声や室外機、夜の話し声は、窓の対策より、発生源のほうで対策したほうが早い場合があります。管理会社や大家さん、管理組合を通すとよいこともあります。
環境省の生活騒音のパンフレットでは、音を出す側の心がけとして、時間帯への配慮、音がもれない工夫、エアコンなどを隣家から離して置くこと、近所づきあいを大切にすることが挙がっています。また、建物の窓、床、壁、天井の遮音性能を高めることで音の伝わり方を減らせる、とも書かれています。
出典:環境省 大気生活環境室「音への気くばり忘れずに」(パンフレット。公表年月はPDF上で確認できず)
窓まわりで変えられること
窓の対策には、いくつかの選択肢があります。何が合うかは、音の種類・高さ・今の窓で変わります。
内窓(二重窓)今の窓の内側にもう一つ窓をつける方法です。窓が二重になり、音が通る経路が増えます。空気層をつくるため、高めの音には働きやすい一方、前述の共鳴透過で特定の高さの音は通りやすくなる場合があります。内窓の特徴と注意点は内窓のデメリットで正直にまとめています。
ガラスの種類合わせガラスや、厚みの違うガラスの組み合わせなど、遮音を考えたガラスがあります。選ぶときの考え方は内窓のガラス選びで説明しています。
隙間への対応窓の枠のずれやパッキンの傷みが原因なら、調整や部品交換で変わる場合があります。いちばん手軽な見直しです。
窓以外の選択肢玄関ドアや換気口が入り口なら、そこを見直します。ドアの対策は玄関ドアのカバー工法でも扱っています。費用は料金のページをご覧ください。
窓では解決しない・向かないケース
正直にお伝えします。次のような音は、窓の工事では変わらない場合があります。
- 壁や床、天井を伝わる音(隣室の声、上階の足音、設備の振動)。窓を二重にしても通る経路が別です。
- 低い響き(低周波音)が主な音。窓の等級は低い音を直接の評価対象にしていません。窓ガラスやサッシの揺れ・がたつきを伴う場合は、窓以外の原因を調べる必要があります。環境省の資料には、がたつきが低周波音によるものかを判断する目安の「参照値」も示されています。
- 発生源が窓のすぐ外にある場合(真隣のエアコン室外機など)。置き場所や向きの見直しが先です。
- 窓を開けて暮らしたい人。窓を閉めた状態での対策なので、開けると効果は期待できません。
- 基地・飛行場の音など、非常に大きい音。詳しくは基地騒音のページで整理しています。
また、窓の工事で音がやわらいでも、聞こえなくなるわけではありません。サッシには隙間が構造上残り、音を完全に遮断することはできないと、日本サッシ協会の資料にもあります。
賃貸・マンションの場合
沖縄は共同住宅が60.9%、借家が50.7%、持ち家率が42.6%です(令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点、令和7年3月31日)。賃貸や分譲マンションでは、窓は共用部分にあたる場合があり、工事に承諾が必要なこともあります。内窓は壁や床を傷つけにくい工法ですが、事前に管理会社や管理組合へ確認してください。詳しくは賃貸の場合、マンションの場合をご覧ください。
迷ったときの見分け方
- 窓を開けたときと閉めたとき、音の大きさが大きく変わる。
- 窓の枠・換気口・ドアの近くで音が強く聞こえる。
- 音は高めの成分が多く、聞こえ方がシャープな気がする。
- 壁や床に耳を当てても、窓側ほど強く聞こえない。
上のものが多いほど、窓まわりの対策が合う可能性があります。反対に、次のものが多いときは、窓以外が原因かもしれません。
- 窓を閉めても、低い響きや振動のように感じる。
- 壁際や床のほうが音が強い。
- 音源が隣室や上階とはっきりしている。
よくあるご質問
犬の鳴き声は、窓で変わりますか?
窓を通って入ってくる音なら、やわらぐ場合があります。ただし、気になり方には個人差があり、鳴く時間や回数も関係します。窓の対策と併せて、飼い主さんや管理会社への相談も有効な場合があります。
低い音(バイクの響きなど)は、窓で変わらないと聞きました。本当ですか?
窓の等級は125Hz以上を対象にしているため、それより低い音は等級からは分かりません。二重構造では、特定の高さで音が通りやすくなる現象もあります。そのため、低い音は窓だけでは変わりにくい場合があります。窓の種類や空気層によって差があるため、現地を見てから判断します。
隣の声が聞こえます。内窓をつければ静かになりますか?
隣室の声が壁や床を伝わっている場合、内窓では変わりません。窓を通る音(ベランダ側からの話し声など)には、やわらぐ場合があります。まず、入り口の確認をおすすめします。
窓の遮音等級(T-2など)の数字だけで選べますか?
等級は実験室で測った窓単体の値です。現場では、取り付けの精度や隙間、建物の他の経路で、聞こえ方は変わります。等級は比べるための目安として使い、音の種類や入り口の確認と併せて考えてください。
このページで参照した資料
- 日本建設業連合会 技術研究部会 音環境専門部会「T等級」(用語集、2019年11月)
- 日本建設業連合会 技術研究部会 音環境専門部会「共鳴透過、共鳴透過現象」(用語集、2019年11月)
- 環境省「騒音に係る環境基準」
- 環境省「低周波音に関するQ&A」(環境省ウェブサイト)
- 環境省 大気生活環境室「音への気くばり忘れずに」(パンフレット)
- 日本サッシ協会「窓の性能とJIS基準について」(資料)
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」沖縄県結果の要点(令和7年3月31日)
現地を見せていただいてから、正直にお伝えします
音の悩みは、窓が原因のことも、そうでないこともあります。現地で窓まわりや入り口を一緒に確かめ、窓の対策で変わる範囲を、できるだけ正直にお伝えします。窓ではなく別の対策が合うと分かれば、そう申し上げます。現地調査・お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。

