沖縄の古い家には、縁側の外に深く張り出した「雨端(あまはじ)」があります。ここ数年、「昔の家は涼しかったのに、今のコンクリートの家はなぜ暑いのか」「あの知恵を今の窓に使えないか」という声をよく聞きます。
この記事では、まず雨端や深い庇が何をしてきたのかを、公的な資料で確かめた範囲でお伝えします。そのうえで、今のRC住宅の窓で同じ考え方を使うには、どんな方法があり、どこまで効くのか、どこからは効きにくいのかを正直に整理します。
先に結論を言うと、窓の暑さは「日ざしを窓の外で止める」のがいちばん筋の通った考え方です。ただし、庇だけで全部は解決しません。窓の向きや、お住まいが持ち家か賃貸かでも、選べる方法が変わります。
雨端と深い庇は、何をしていたのか
雨端は、沖縄の民家で深く庇が出た部分を指す言葉です。海洋博公園(国営公園)の民家展示のページには、座敷の外側90cm〜1.2mの位置に雨端の柱を立てて軒を深くし、台風などの風雨に備えている、という説明があります。
国土交通省が公開している、沖縄県の住宅事例(令和2年度の採択事例)にも、雨端が出てきます。石垣市の住宅事例では、次のような使われ方が紹介されています。
- 南面に雨端と掃き出し窓を設け、屋内と屋外の中間にある、温熱的な緩衝空間(やわらげる場所)にしている。
- 南中高度が高い太陽による日射量には、南面の深い雨端や、外付けルーバーで日射量の軽減を図っている。
- 雨端の下にできる影、雨よけ、風通しの良さが、人が集まる場所になる。
今帰仁村の事例(鉄筋コンクリート造・一部木造)では、強い日ざしに対して、深い軒庇や板目透し貼りで日射を遮っている、とあります。風通しのために、南面と東面の大開口と、反対側の換気窓を組み合わせている、という説明もあります。
つまり雨端や庇は、「日ざしを窓に当てない」「雨の吹き込みを減らす」「風を通す」を、同じ仕組みでまとめて受け持つものでした。コンクリートの家でも、この考え方を取り入れている設計があることが分かります。
なぜ、今の窓は暑く感じるのか
那覇の月平均気温は、7月で29.1℃、湿度は78%です(気象庁平年値1991〜2020)。年平均でも23.3℃、湿度73%あります。暑さが長く、湿気も多い土地です。
沖縄の住宅は、非木造が96.5%、鉄骨鉄筋コンクリート造が93.8%、共同住宅が60.9%です(令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点)。コンクリートは日ざしで温まった熱をためやすい、という性質があります。RC住宅の暑さについては、RC造の家が暑い理由でも整理しています。
昔の家は、深い軒で日ざしを建物の手前で止めていました。今の家は、外壁のすぐ外に窓があり、軒や庇が浅いことがあります。そうなると、ガラスに日ざしが直接当たります。ガラスを通った日ざしは室内で熱に変わります。窓の暑さ対策が「日ざしをどこで止めるか」の話になるのは、このためです。
日ざしは「窓の外」で止めるほど、熱が入りにくい
日ざしの熱がどれくらい室内に入るかを表す数字に「日射熱取得率」があります。小さいほど、熱が入りにくいことを示します。
国立研究開発法人 建築研究所が公開している「付録C」の表(日本サッシ協会のサイトに掲載。Ver.12、2021年4月)に、ガラスの種類ごとに、付属部材(和障子・外付けブラインド)がある場合とない場合の値が載っています。その一部をお見せします。
| ガラスの仕様 | 付属部材なし | 和障子 | 外付けブラインド |
|---|---|---|---|
| 単板ガラス | 0.88 | 0.38 | 0.19 |
| 二層複層ガラス(Low-Eなし) | 0.79 | 0.38 | 0.17 |
| Low-E二層複層ガラス(日射遮蔽型) | 0.40 | 0.26 | 0.11 |
出典:建築研究所「付録C 大部分がガラスで構成される窓等の開口部の垂直面日射取得率」表1 ガラスの垂直日射熱取得率(日本サッシ協会ホームページ掲載版、Ver.12、2021年4月)
この表から読み取れることは次の2点です。
- 二層複層ガラス(Low-Eなし)の場合、付属部材なしが0.79、外付けブラインドがあると0.17です。ガラスの外側で日ざしを止めると、数字が小さくなります。
- 日射遮蔽型のLow-E複層ガラスなら、付属部材なしでも0.40です。ガラスそのものを遮熱タイプにする方法も、数字に表れます。
注意点があります。これは規格上の計算に使う値で、建物の向き、日ざしの角度、取り付け方、周りの建物で、実際の体感は変わります。庇そのものの数値は、この表には出ていません。レースカーテンや内付けブラインドの値も、今回は確認できていないため載せません。窓が暑い原因については、カーテンを閉めても暑い理由で別に説明しています。
今のRC住宅の窓で、できる置き換え
雨端や深い庇の考え方を、今の窓で形にする主な方法を並べます。向き・条件で向き不向きがあるため、公平に書きます。
庇を後付けする
窓の上に庇を足す方法です。日が高い時間帯の日ざしを、ガラスに当てにくくできる場合があります。国土交通省の事例で庇や雨端が使われていたのは、南面でした。東面や西面の窓に、同じ考え方がそのまま当てはまるとは限りません(この点は、確認できた資料では扱われていません)。
また、RC造の外壁に取り付ける場合は、固定のしかたや強度の確認が要ります。後付けの庇は、建物の管理者や、マンションなら管理組合の承諾が必要なことがほとんどです。庇の詳しい考え方は庇(ひさし)の役割と選び方もご覧ください。
外付けの日よけ・すだれ・ブラインド
窓の外側に吊るしたり、取り付けたりする方法です。上の表のとおり、外付けブラインドは数字の上で、ガラスの外で日ざしを止める効果が見える方法です。すだれも「外で止める」点は同じです(すだれの数値は、確認できた資料には出ていません)。
台風のときは、備えが要ります。外付けの日よけ・すだれ・ブラインドは、風で飛んだり壊れたりしやすい部分です。台風が近づく前に、取り外すか、巻き上げて固定するかを、お使いの製品の取扱説明書で確かめてください。窓まわりの台風前の準備は、台風が来る前の窓の準備にまとめています。
遮熱タイプのLow-E複層ガラス
日ざしをガラスで抑える方法です。上の表のとおり、遮熱タイプは、付属部材なしでも数字が小さくなります。遮熱と断熱の違いは断熱と遮熱の違いで説明しています。窓の外の見た目を変えずにできるのが利点です。一方で、ガラスの種類による暗さの違いや、冬の日ざしを入れにくくなる点(沖縄では冬の気温が低い日もあります)は、事前に確かめる必要があります。
内窓(二重窓)
内窓は、今ある窓の内側にもう1枚窓をつける方法です。一般的には、暑さ・寒さ・音・結露に対する効果が期待されます。ただし、日射熱取得率を内窓でどれだけ下げられるかは、今回確認できた資料には載っていません。日ざしを窓の外で止める方法と、内窓は役割が違うと考えてください。内窓の考え方は内窓(二重窓)のページをご覧ください。
窓では解決しない・向かないケース
正直に書きます。次の場合は、窓や日よけだけでは、体感が変わりにくいことがあります。
- 暑さの主な原因が、屋上や最上階の天井、外壁にある場合。窓だけを直しても、熱の入り口が別に残ります。
- 風が通らない間取りで、湿気がこもる場合。雨端のように「風を通す」考え方も、同じくらい大切です。
- 台風の強風や飛来物が心配で、外付けの日よけを常時つけられない場合。取り外し・巻き上げの手間が続けられるかを、先に考えてください。
- 景観や管理規約で、外側に物を付けられない場合。
窓の外に何もつけられない場合は、遮熱Low-E複層ガラスや、内側の対策を組み合わせる方法もあります。何が主な原因かは、お部屋ごとに違います。
賃貸・マンションの場合
窓の外側の庇・外付け日よけ・すだれは、共用部(ベランダ・外壁)に関わることが多く、管理会社や管理組合の承諾が必要になります。窓サッシ、ガラス、内窓についても、事前の承諾と、退去時の原状回復の確認が要ります。まず契約書や管理規約を見て、管理会社へ相談してください。
詳しくは賃貸のお部屋の窓について、マンションの内窓についてをご覧ください。
迷ったときの見分け方
- 日ざしが直接入る窓が暑い(特に午前・午後に窓際が熱くなる):外で日ざしを止める方法(庇・外付け日よけ・すだれ)が向きやすい。
- 外にはつけられない:遮熱Low-E複層ガラス、または内窓を検討する。
- 窓際の暑さより、部屋全体が暑い:屋根や天井、風通しなど、窓以外も疑う。
- 賃貸・マンション:先に管理会社・管理組合へ確認する。
よくあるご質問
雨端や庇があれば、窓の暑さ対策は十分ですか
十分とは言い切れません。確認できた国土交通省の事例では、南面の深い雨端や軒庇が日射量をやわらげる工夫として紹介されていますが、窓の向きや日ざしの角度で効き方は変わります。庇だけで足りるかは、お住まいの条件によります。
庇を後付けすると、涼しくなりますか
涼しくなると言い切ることはできません。窓の向きや庇の出の長さで変わります。東面や西面の窓は、南面と同じようにはいかない場合があります。取り付けにあたっては、強度や管理者の承諾も確認してください。
台風のとき、外付けの日よけはどうすればよいですか
台風が近づく前に、取り外すか、巻き上げて固定するのが一般的です。具体的な方法や風の強さの目安は、お使いの製品の取扱説明書に従ってください。
内窓だけで、日ざしの暑さは解決しますか
内窓は、断熱・遮音・結露に向く方法です。日ざしの熱を窓の外で止める方法とは役割が違います。暑さの原因が日ざしなら、庇・外付け日よけ・遮熱ガラスとの組み合わせを考える場合があります。費用は料金のご案内、補助制度は補助金のご案内をご覧ください。
このページで参照した資料
- 国土交通省「住宅・建築物の省エネ・気候風土適応住宅 事例」の沖縄県事例(石垣市の住宅、今帰仁村の住宅)(令和2年度採択事例)
- 海洋博公園(国営沖縄記念公園)「沖縄の民家・貫木屋」の解説ページ
- 駒沢女子大学 教員コラム「雨端(あまはじ)」(2013年4月)
- 建築研究所「付録C 大部分がガラスで構成される窓等の開口部の垂直面日射取得率」(日本サッシ協会ホームページ掲載版、Ver.12、2021年4月)
- 気象庁 平年値(1991〜2020)那覇
- 総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点(令和7年3月31日)
現地を見せていただいてから、正直にお伝えします。窓の暑さが、日ざしによるものか、屋根や風通しによるものかは、お部屋を見ないと分かりません。現地調査・見積りは無料です。窓ではないと分かった場合は、そう申し上げます。

