「エアコンが効きにくい」「外の音が気になる」「窓がびしょびしょになる」。入居者さんからこうした声が届き、窓まわりをどうするか迷っている賃貸オーナーさん、大家さんは少なくありません。
窓を直せば入居率が上がる、クレームが減る、と言い切れるわけではありません。窓が原因の不満もあれば、家賃・立地・築年数・管理のしかたが原因の不満もあるからです。
このページでは、入居者さんの不満と窓の関係、オーナーが窓に手を入れるときの考え方、費用負担の考え方、そして窓では解決しないことを整理します。金額は書きません。
沖縄の賃貸で、窓の不満が出やすい理由
まず、沖縄の住まいの事情を数字で見ておきます。令和5年住宅・土地統計調査(沖縄県企画部統計課『令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点』、令和7年3月31日)では、人が住んでいる住宅のうち、次のとおりです。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 非木造の住宅 | 96.5% |
| 鉄骨・鉄筋コンクリート造 | 93.8% |
| 共同住宅 | 60.9% |
| 借家 | 50.7% |
| 持ち家率 | 42.6% |
出典:沖縄県企画部統計課『令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点』(令和7年3月31日)
沖縄は借家が半数を超え、鉄骨・鉄筋コンクリート造の共同住宅が多い土地です。窓まわりは建物の中でも外気の影響を受けやすい場所なので、入居者さんの不満が窓に向かいやすい面があります。
気候も関係します。気象庁の平年値(1991〜2020年)で那覇を見ると、次のとおりです。
| 月 | 平均気温 | 平均湿度 |
|---|---|---|
| 1月 | 17.3℃ | 66% |
| 6月 | 27.2℃ | 83% |
| 7月 | 29.1℃ | 78% |
| 年平均 | 23.3℃ | 73% |
出典:気象庁 平年値(1991〜2020年)、那覇
年平均の湿度が73%と高く、6月は83%です。湿度が高い時期に室内外の温度差ができると、窓に水滴がつきやすくなります。一方で、夏は気温が高い状態が続くため、冷房の効きや電気代への不満も出やすくなります。
入居者さんの不満と、窓の関係
入居者さんから出やすい不満を、窓との関係で整理します。
- 暑い、冷房が効きにくい:日差しや熱が窓から入ることが一因の場合があります。ほかに、屋上や最上階の熱、エアコンの能力や設置状況、断熱の状態も関係します。窓だけが原因とは限りません。詳しくは 賃貸物件で内窓をつけるときのチェックポイント に整理しています。
- 音がうるさい:一般に、窓は壁より音が通りやすいといわれます。ただし、音の入り方は、音の種類(車、飛行機、近隣の生活音など)や、窓の隙間、換気口、壁の状態でも変わります。音の悩みは 防音のページ で整理しています。
- 結露、カビ:窓の表面で起きやすい現象ですが、室内の湿気の量や換気の状況が大きく関わります。
- 防犯が不安:鍵の状態、窓の位置(1階か上の階か)、周りの見通しなどで事情が変わります。
窓に手を入れると、こうした不満のうち、窓が原因の部分はやわらぐ場合があります。ただ、どの不満がどのくらい窓のせいなのかは、現地を見ないと分かりません。
結露とカビは、オーナーと入居者さんのどちらの問題か
結露やカビは、賃貸ではもめやすい話題です。国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』(平成23年8月)の別表1には、次のような考え方が示されています。
結露を放置して広がったカビ・シミについて、結露は建物の構造上の問題であることが多いとされています。そのうえで、入居者さんが結露の発生に気づいていながら、貸主に知らせず、拭き取るなどの手入れもせず、壁などを傷めた場合は、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多い、とされています。
つまり、結露そのものは建物の構造の問題のことが多く、その後の手入れの状況で責任の考え方が分かれる、という整理です。この考え方からも、入居者さんが結露に気づいたときに知らせやすい連絡先をつくっておくことは、トラブルを防ぐ一助になります。
結露やカビのしくみと対策は 結露・カビのページ で説明しています。
オーナーが窓に手を入れるときの考え方
窓まわりの工事には、主に次の方法があります。
- 内窓を追加する:今ある窓の室内側にもう1枚窓を付ける方法です。工事は室内側から行います。内窓の特徴は 内窓のページ に詳しく書いています。
- カバー工法:今ある窓枠の上から新しい枠をかぶせて、窓を取り替える方法です。窓全体を入れ替えます。
- 防音や防犯に合うガラスの選択:内窓や取替窓の中身として選ぶものです。
ガラスだけの交換は当社では扱っていません。
どの方法が合うかは、窓の大きさ、サッシの状態、建物の管理規約などで変わります。分譲マンションの一室を貸している場合は、管理規約の確認が先です。
内窓は「設備」として扱うのか
オーナーが負担して付けた内窓を、物件の設備として扱うのか、入居者さん限りの付属物として扱うのかは、気になる点だと思います。
国土交通省のガイドラインには、内窓について直接の定めはありません。実務では、次の点を契約書や重要事項の説明に書いておくと、後の食い違いを防ぎやすくなります。
- 内窓を物件の設備として備え付けるのか
- 入居中に不具合が起きたときの連絡先と修繕の考え方
- 退去時に、取り外しや原状回復の対象になるのかどうか
経理上の扱い(修繕費にするか、資産にするか)は、税理士さんにご相談ください。
入居者さんの承諾・原状回復・契約の確認
オーナーが工事をする場合に、入居中の部屋で作業するときの話です。民法第606条は、賃貸人は賃貸物の使用・収益に必要な修繕をする義務を負うとし、同条第2項で、賃貸人が保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人はこれを拒めないとしています。ただし、これは物件の保存に必要な行為についての定めです。入居促進のための工事までが対象かどうかは、条文だけでは言い切れません。日程の調整や立ち会いについて、入居者さんに事前に了承をいただくのが現実的です。
原状回復についても、条文を確認しておきます。民法第621条は、賃借人は借りたものを受け取った後に生じた損傷を元に戻す義務を負うとしています。ただし、通常の使用による損耗と経年変化は、この義務の対象から除かれています。
国土交通省のガイドライン(再改訂版)は、次のように整理しています。
- 原状回復とは、賃借人の居住・使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超える使用による損耗・毀損を復旧すること。
- 次の入居者を確保する目的で行う設備の交換や化粧直しなどのリフォームは、経年変化や通常損耗の修繕にあたり、賃貸人が負担すべきとされています。
- 賃借人に特別の負担を課す特約には、客観的・合理的な理由があること、賃借人がその内容を認識していること、賃借人が意思表示をしていることの3つの要件が示されています。
オーナーが入居促進のために付ける内窓は、この「次の入居者を確保する目的で行う設備の工事」に近い性格をもちます。ガイドラインの考え方に照らすと、オーナー負担と考えるのが自然です(個々の契約で変わります)。
賃貸の契約には、ほかの法律のルールも関わります。契約書に特別な定めがある場合や、トラブルになりそうな場合は、管理会社や弁護士さんなど専門家にご相談ください。賃貸物件の窓まわりの一般的な話は 賃貸物件のページ にもまとめています。分譲マンションでの工事の考え方は マンションの内窓のページ をご覧ください。
費用負担の考え方
ここでは金額は書きません。考え方の整理です。
| 場面 | 負担の考え方の目安 |
|---|---|
| 入居促進のために、オーナーが窓を直す | ガイドラインの考え方に照らすと、オーナー負担と考えるのが自然です(個々の契約で変わります) |
| 入居者さんが希望して窓を直す | 入居者さんとの取り決め次第です。事前に書面で確認します |
| 入居者さんの故意・過失で窓を傷めた | 原状回復の対象になる場合があります。通常の使用による劣化は対象外です |
出典:国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』(平成23年8月)、民法第621条
国の先進的窓リノベ2026事業では、住宅を持ち、人に貸している個人や法人も対象です。補助額の合計が5万円以上であることが条件です。工事は遅くとも2026年12月31日までで、予算がなくなればそこで終わります。申請は、登録した事業者が行います。くわしくは 補助金のページ をご覧ください。工事の費用の目安は 料金のページ にまとめています。
窓では解決しないこと、向かないケース
窓が原因ではない不満や、窓の工事が合わないケースもあります。ここでお伝えします。
- 家賃が周りの相場より高い:窓を直しても、家賃とのつり合いは変わりません。
- 立地への不満(駅やバス停から遠い、周りが暗い、買い物が不便):窓では変えられません。
- 築年数による設備の古さ(水まわり、床、壁、エアコンなど):窓より先に直したほうがよい場合があります。
- 管理の不満(連絡が遅い、共用部が汚れている):窓を直しても、管理の印象は変わりません。
- 結露の原因が室内の湿気や換気不足の場合:窓の工事だけでは、結露が残る場合があります。
- 窓まわりの壁や天井に雨水がしみ込んでいる場合:先に、雨漏りの原因の修理が必要です。
- 入居者さんが退去予定で、工事の効果を長く見込めない場合:費用のかけ方を考え直す余地があります。
- 内窓を付けるスペースがない窓、カーテンボックスや手すりなどが干渉する窓:取り付けられないことがあります。
窓の工事は、入居者さんの不満のうち窓が原因の部分にだけ、役立つ工事です。
迷ったときの見分け方
オーナーとして、次の順に確かめると整理しやすくなります。
- 入居者さんの声を集める:不満の中身(暑い、音、結露、防犯)と、どの部屋・どの窓で起きているかを確認します。
- 窓が原因かを確かめる:同じ建物で、窓の向きや階数によって不満に差があるかを見ます。西向きの部屋に偏っているなら窓の可能性があります。最上階に偏るなら、屋根からの熱も疑います。
- 退去が出たときに空室の窓を見る:入居者さんがいない間は、工事の日程調整がしやすくなります。
- 契約書と管理規約を見る:誰がどこまで負担するのか、窓やサッシが管理規約でどう扱われているかを確かめます。
- 現地を見て相談する:窓の状態と、窓以外の原因の可能性を見てもらいます。
よくあるご質問
内窓を付けると、入居率は上がりますか?
入居率は、家賃、立地、築年数、管理のしかたなど、多くの要素で決まります。窓だけで入居率が決まるわけではありません。ただし、暑さ・音・結露といった窓まわりの不満を減らしやすくなるため、入居者さんの満足度に役立つ場合があります。
内窓は、退去のときに取り外すものですか?
契約や取り決めで変わります。国土交通省のガイドラインには、内窓について直接の定めはありません。備え付けの設備として扱うのか、入居者さんの持ち込みの扱いにするのかを、契約書に書いておくと食い違いを防ぎやすくなります。
入居者さんが住んでいる部屋でも工事できますか?
内窓の取り付けは室内側からの作業です。入居者さんの了承と日程の調整ができれば、住んでいる部屋でも行える場合があります。家具の移動や、室内に入る時間帯などを、事前にお伝えしておくと安心です。
費用を入居者さんに負担してもらえますか?
オーナーが入居促進のために行う工事は、ガイドラインの考え方に照らすと、オーナー負担と考えるのが自然です(個々の契約で変わります)。入居者さんに負担をお願いする場合は、特約の3つの要件(合理的な理由、内容の認識、意思表示)を満たすかどうか、専門家に確認してください。
このページで参照した資料
- 沖縄県企画部統計課『令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点』(令和7年3月31日)
- 気象庁 平年値(1991〜2020年)那覇
- 国土交通省住宅局『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)』(平成23年8月)
- 国土交通省住宅局『「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に関する参考資料』(令和5年3月)
- 民法(明治29年法律第89号)第606条、第621条(e-Gov法令検索)
現地を見せていただいてから、正直にお伝えします
賃貸物件の窓について迷われたら、まず現地を見せてください。入居者さんの不満のうち、窓で変えられる部分と、窓以外の原因が大きい部分を分けてお伝えします。窓の工事が合わないと分かれば、その旨を正直に申し上げます。現地調査とお見積りは無料です。

