実家に電話をすると「暑くないよ」「エアコンは電気代がもったいないからつけてない」と言われる。帰省すると、閉め切った部屋で扇風機だけが回っている。そんな場面に心当たりのある方は、少なくないと思います。
同居していても、気づきにくいことがあります。本人が「大丈夫」と言うので、強く言い出せない。けれど、心配は残る。この記事では、高齢の方の室内の暑さ・寒さについて、公的な資料で確認できたことと、家族ができること、窓まわりで変えられる範囲と変えられない範囲を、順に整理します。医療に関する判断は、かかりつけの医師など専門家にご相談ください。
なぜ、高齢の親は家の中でも暑さに気づきにくいのか
環境省の「熱中症環境保健マニュアル」には、高齢の方が熱中症にかかりやすい理由として、「暑い」と感じにくくなること、のどの渇きを感じにくくなること、体内の水分量が減ることなどが挙げられています。年齢とともに皮膚の温度センサーの感度が鈍くなり、暑さを感知しにくくなる、という説明もあります。
同じマニュアルには、夏(7月から9月)の70歳以上の方の居室について、若年者より室温が約2℃高く(31〜32℃に達している)、相対湿度も約5%高い環境で生活している、という報告が紹介されています(就寝時を除く)。理由として、冷房を使う時間が短く、使うときも設定温度が高いことが挙げられています。体の冷えを嫌がる、節電を意識する、といった事情もあるとされています。
つまり、「エアコンを使いたがらない」のは、わがままではなく、暑さを感じにくいことも関係している、ということです。
環境省の高齢者向けリーフレット(2023年5月版)では、熱中症は「室内や夜間でも多く発生しています」と書かれています。同じリーフレットは、東京都監察医務院のデータとして、東京23区の令和3年夏の熱中症死亡者のうち、屋内で亡くなった方の約9割はエアコンを使っていなかった、と示しています(速報値、計39人。エアコンはあるが使っていなかった方が76%、エアコンがなかった方が18%)。人数が限られた速報値ですので、全国の傾向と同じとは言えません。それでも、「エアコンがあるのに使われていない」場面が少なくないことは分かります。
沖縄の事情:長い暑さと、鉄筋コンクリートの住まい
那覇の月平均気温は、気象庁の平年値(1991〜2020年)で、6月が27.2℃、7月が29.1℃、年平均が23.3℃です。湿度も、6月は83%、7月は78%と高めです。暑さが長く、湿気も多い土地です。
住まいの面では、令和5年住宅・土地統計調査(沖縄県結果の要点、令和7年3月31日)で、沖縄の住宅の非木造は96.5%、鉄骨鉄筋コンクリート造は93.8%、共同住宅は60.9%、借家は50.7%でした。鉄筋コンクリートは熱をため込みやすい面があるため、日中に温まった壁が夜になっても室内に熱を出し続けることがあります(詳しくは RC住宅の暑さ でも触れています)。
また、賃貸や集合住宅が多いということは、「親の家だから自分たちの判断で窓を替えよう」と簡単には進められない場合が多い、ということでもあります。この点は後の節で触れます。
家族が今日からできること
窓の工事を考える前に、費用をかけずにできることがあります。環境省のマニュアルとリーフレットに書かれている内容を、家族の動きに置き換えて整理します。
- 温湿度計を、親が過ごす部屋に置く。 マニュアルは、高齢の方は暑さを感じにくくなっているため、皮膚感覚で判断せず、温湿度計で確認するよう勧めています。周りの人も協力して、こまめにチェックするとよい、とされています。
- 目安は室温28℃前後。ただし、エアコンの設定温度とは別物です。 環境省は、この「28℃」は目安であり、設定温度を28℃にしても室内が28℃になるとは限らない、と説明しています。温度計の数字を見て調整します。
- 冷やしすぎにも注意する。 マニュアルには、室温を下げすぎる(24℃を下回る)と、外気温との差が大きくなり、出入りの際に体の負担になる、とあります。
- 夜間のタイマーに気をつける。 マニュアルでは、夜間はエアコンのタイマーが切れたあとに室温が非常に高くなることがあるため、タイマーは少なくとも3〜4時間は使うよう書かれています。
- 風の向きを変える。 冷気が体に直接当たり続けないように風向きを調整し、扇風機を併用する、という工夫が紹介されています。「冷えるから使いたくない」という理由には、ここが役に立つ場合があります。
- フィルターを掃除する。 2週間に1回が目安とされています。
- のどが渇いていなくても水分をとる。 水分や塩分の量は、持病のある方はかかりつけ医の指示に従う、と注記されています。
声かけのコツとして、「暑いからつけて」と言うより、「温度計で何度か、一緒に見てみよう」と数字を共有するほうが、受け入れてもらいやすいと感じる家族もいるようです(これは一般論で、ご家庭によります)。
なお、環境省のマニュアルは、水分をとっているか、エアコンの温度調整ができているかは、本人に任せず周りの人が気にかけてサポートするよう書いています。別居や家族が不在の場合は、身近な方の協力を得たり、介護保険サービスなどを使ったりして、できる限り見守れる環境をつくるよう勧めています。
エアコン代が気になって使わない場合は、電気代とエアコン の話も参考になります。「効かない」と感じている場合は、エアコンが効かないとき をご覧ください。
寒さの側:浴室・脱衣所の温度差とヒートショック
暑さの反対側として、入浴時の温度差も心配される方が多いと思います。
消費者庁の資料「高齢者の事故に関するデータとアドバイス等」(令和4年12月)には、次のことが書かれています。
- 厚生労働省の人口動態調査によると、65歳以上の「溺死・溺水」の約8割が浴槽での事故である。
- 家や居住施設の浴槽での死亡者数は令和3年に5,072人で、そのうち65歳以上が4,750人を占める。
- 東京消防庁管内の令和3年の月別救急搬送では、高齢者の溺れる事故は11月から2月に多い。
- ヒートショックは、温度の急激な変化で血圧が大きく上下することなどによって起こる健康被害と捉えられている。暖かい室内から温度の低い脱衣所や浴室へ移り、暖かい湯に入るという温度変化では、血圧の変動が起こるため注意が必要とされている。
同じ資料は、居間や脱衣所が18℃未満の住宅では、入浴事故のリスクが高いとされる湯温42℃以上の「熱め入浴」が増える、という研究結果があることも紹介しています。
沖縄ではどうなのか
ここは、正直にお伝えします。沖縄県内で入浴中の事故がどのくらい起きているのかを示す公的な数字を、この記事では確認できませんでした。そのため、「沖縄でも多い」「沖縄では少ない」とは言えません。
参考までに、那覇の1月の平均気温は17.3℃(気象庁平年値)です。冬でも暖かい土地ですが、上で紹介した「18℃未満」という数字と近い水準ではあります。ただ、平均気温と、実際の脱衣所の温度は別のものです。住まいによっても違うため、関係があるかどうかは、この数字だけでは判断できません。気になる場合は、脱衣所や浴室に温度計を置いて、実際の温度を見てみるのが確実です。
消費者庁の資料が挙げる家族のできることは、入浴前に脱衣所や浴室を暖める、湯温は41℃以下・入浴は10分までを目安にする、入浴前に同居者に一声かける、同居者は入浴時間が長いときに声をかける、などです。環境省のマニュアルにも、熱めの風呂に長くつかると浴槽内で熱中症のような状態になる可能性があるため、入浴時は周囲に一声かけるよう促す、とあります。
窓まわりで変えられること
ここから、窓の話です。環境省の資料(2023年1月17日付、出典は日本建材・住宅設備産業協会 省エネルギー建材普及促進センター)では、冬の暖房時の室内の熱の約6割が窓から逃げ、夏の冷房時に室外から侵入する熱の約7割が窓から入ってくると言われている、と紹介されています。窓は、熱の出入りが大きい場所の一つです。
また、消費者庁の同じ資料は、総務省の平成30年住宅・土地統計調査を集計して、全国の住宅で「二重以上のサッシ又は複層ガラスの窓」がない住宅が67.8%だった、としています。窓の断熱性を高めることが重要と考えられている、とも書かれています。
窓まわりでできることを、手軽なものから並べます。
| 方法 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| すだれ・ブラインド・カーテン | 日差しを遮る。環境省のマニュアルは、部屋の外側で遮るほうが効果的で、難しければ室内側でカーテンやブラインドを使うとしている | まず試したい。賃貸でもしやすい |
| 日射遮断フィルム | ガラスに貼って日射を遮る。マニュアルの「住まいの工夫」にも挙げられている | 日差しが強い窓。詳しくは 遮熱フィルムと内窓 |
| 内窓(二重窓) | 今ある窓の内側にもう一つ窓をつける。熱の出入りをやわらげやすくなる | 断熱と日射の両方を考えたい場合 |
| カバー工法 | 今の枠の上から新しい窓枠をかぶせて交換する | 窓そのものが傷んでいる場合 |
西日が強い窓は、西日の対策 も参考になります。内窓とカバー工法の違いは、内窓とカバー工法 にまとめています。
浴室や脱衣所に窓がある場合は、そこも検討の対象になります。ただし、浴室は湿気や水がかかる条件が居室と違います。取り付けられる製品や方法は住まいによって異なるため、現地で確認が必要です。
窓では解決しないこと・向かないケース
窓を替えれば安心、とは言えません。次のような場合は、窓以外の手当てが先になります。
- 本人がエアコンを使わない。 窓の性能を上げても、エアコンをつけなければ、室温は下がりません。内窓は「冷やす道具」ではなく、「熱の出入りをやわらげる道具」です。
- 暑さを感じにくい状態そのもの。 窓を替えても、本人の感覚は変わりません。温度計と声かけが引き続き必要です。
- 部屋の中に熱源がある。 マニュアルには、湯沸かしポットなど放熱する機器が室温を上げることがある、と書かれています。
- 日中ほとんど窓から日が入らない部屋。 日射の対策の効果は小さいかもしれません。
- 窓の形や枠の状態により、内窓がつけにくい場合。 製品や取り付けの条件があります。内窓のデメリット も先にご覧ください。
また、脱衣所や浴室の寒さは、窓だけでなく、暖房の有無や床・壁の状態にも左右されます。窓を替えたあとも、入浴前に暖める、声をかけるといった習慣は続ける必要があります。
親の家の場合:本人の承諾、費用、賃貸の進め方
親の家の窓を変える場合は、技術より先に、人の事情を整理するほうが大切です。
1. 本人の承諾を、最初に。 工事は、住んでいる方の暮らしの中に入る作業です。「心配だから」と先に決めてしまわず、「どの窓が一番暑いか、教えてほしい」と、本人の困りごとを聞くところから始めます。
2. 費用の負担を、先に話す。 誰が払うのか、あとで揉めやすい点です。金額の目安は 料金のページ を、補助制度は 補助金のページ をご覧ください。制度には期間や条件があります。
3. 賃貸の場合は、管理会社やオーナーへ。 窓の工事は、建物の持ち主の了解が必要です。内窓は取り外せる形で付けられる場合もありますが、できるかどうか、原状回復をどうするかは、契約や建物によって異なります。詳しくは 賃貸の場合 と マンションの内窓 をご覧ください。分譲マンションでは、管理規約の確認も要ります。
4. 離れて住んでいる場合。 立ち会いや鍵の受け渡し、日程調整に、ご家族の関わりが必要になることがあります。見積りの段階から、ご家族がお電話や同席で関わっていただけると進めやすくなります。
迷ったときの見分け方
- 親の部屋に温湿度計があり、数字を家族も見られるか
- エアコンはあるのに、日中も夜間も使われていないか
- 温度計の数字が28℃前後を大きく超える時間帯が、窓の近くの日差しと重なっていないか
- 西日や朝日が直接入る窓が、普段過ごす部屋にあるか
- 脱衣所や浴室の温度を測ったことがあるか
- 窓以外(エアコンの故障・フィルターの汚れ・熱源)の原因を先に確かめたか
上の問いに、「温度計がない」「エアコンを使っていない」が当てはまるなら、窓より先にそこからです。反対に、エアコンを使っても部屋が冷えにくく、日差しの強い窓がある場合は、窓まわりを見直す意味があります。
よくあるご質問
親が「暑くない」と言い張ります。どう伝えればよいですか。
環境省のマニュアルでは、高齢の方は暑さを感じにくくなっているため、皮膚感覚ではなく温湿度計で確認するよう勧められています。「感じ方」ではなく「温度計の数字」を一緒に見る形にすると、話しやすいことがあります。
エアコンの設定は何度にすればよいですか。
環境省は、室温28℃を目安とし、それは設定温度ではないと説明しています。温度計の数字を見ながら調整する、というのが基本です。冷やしすぎ(24℃を下回る)にも注意とされています。体調に不安がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。
内窓をつければ、エアコンは要らなくなりますか。
なりません。内窓は熱の出入りをやわらげるもので、室温を下げる機器ではありません。エアコンと一緒に使って、効きやすい環境をつくる位置づけです。
賃貸の親の家でも工事はできますか。
建物や契約によります。まず管理会社かオーナーに、窓まわりの工事ができるかを確認してください。難しい場合は、すだれやカーテン、フィルムなど、できる範囲の対策から始める方法もあります。
このページで参照した資料
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」(熱中症予防情報サイト掲載。第Ⅲ章「熱中症を防ぐためには」)
- 環境省「高齢者のための熱中症対策」リーフレット(2023年5月版)
- 消費者庁「高齢者の事故に関するデータとアドバイス等」(令和4年12月)
- 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(平成29年1月)
- 環境省 COOL CHOICE「窓の断熱リフォームから、暮らしの脱炭素を始めよう」(2023年1月17日)
- 気象庁 平年値(1991〜2020年)那覇
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 沖縄県結果の要点」(令和7年3月31日)
現地を見せていただいてから、正直にお伝えします
窓の問題なのか、エアコンや暮らし方の問題なのかは、お宅を見ないと分からないことが多くあります。現地調査と見積りは無料です。見たうえで窓では変わらないと分かれば、そう申し上げます。離れて暮らすご家族の方は、お問い合わせ の際に、親御さんの状況やご心配な点をそのままお書きください。

