「沖縄の暑さ対策なら、窓に遮熱フィルムを貼るのと、内窓(二重窓)を入れるのと、どちらがいいのでしょうか」——沖縄で窓のご相談をいただくとき、いちばん多い質問のひとつです。調べればフィルムの施工店も内窓の専門店も出てきて、どちらも「これがおすすめです」と書いてあります。そもそも同じ土俵に乗っているものなのかが分かりにくいのだと思います。

先に結論を申し上げると、遮熱フィルムと内窓は、勝ち負けを決めるようなものではありません。効いてくれる相手が違うからです。このページでは気象庁の平年値、JIS A 5759、板硝子協会の技術資料、国の先進的窓リノベ2026事業という公的な資料をもとに、それぞれが何をしてくれて何をしてくれないのかを整理します。フィルムのほうが合う場合は、そのように正直に書きます。

遮熱フィルムと内窓は、そもそも競う相手ではありません

窓から入ってくる「暑さ」は、おおまかに3種類あります。

1つめは日射です。日中、ガラスを通り抜けて床や家具、そして人の体を直接温める太陽の熱。
2つめは伝わってくる熱です。日が暮れたあとも、昼のあいだに温まったガラスとサッシから室内側へじわじわ伝わってくる熱。
3つめはすき間から入る空気です。建てつけの古いサッシの隙間から入る、湿気を含んだ外の空気。

遮熱フィルムが担当しているのは、基本的に1つめだけです。内窓(二重窓)は、ガラスの選び方しだいで1つめに効かせつつ、あいだに空気の層ができるので2つめにも、締め切ったときの気密が上がるので3つめにも同時に効きます。ですから本当の問いは「どちらが優れているか」ではなく、お困りごとが1つめだけで済むのか、2つめ3つめまで含むのかです。

沖縄の窓に当たっている日射は、数字で見るとこれだけあります

気象庁の那覇の平年値(統計期間1991〜2020年)を見ると、沖縄の窓がどれだけの日射を受けているかが分かります。全天日射量の平均は7月が20.9MJ/平方メートル、8月が19.2MJ/平方メートルで、年間平均の14.5MJ/平方メートルを大きく上回ります。日照時間も7月227.0時間、8月206.3時間と年間で最も長い月です。

もうひとつ、沖縄らしい数字があります。那覇の7月の日最低気温は27.0℃、8月は26.8℃。日が落ちても外の空気が下がりません。本土なら「夜は窓を開ければ涼しい」という逃げ道がありますが、沖縄ではその手が効きにくい。日射だけを止めれば終わり、という土地ではないことが、この数字に表れています。(出典:気象庁「那覇(沖縄県)平年値(年・月ごとの値)」)

沖縄の住宅で日射が直接入るリビングの掃き出し窓

遮熱フィルムにできること——JIS A 5759で決まっていること

建築物の窓に貼るフィルムには、JIS A 5759「建築窓ガラス用フィルム」という日本産業規格があります。規格として何が決められているかを見ると、フィルムの守備範囲がはっきりします。この規格ではフィルムを日射調整フィルム、低放射フィルム、ガラス飛散防止フィルム、ガラス貫通防止フィルムに分けています。暑さ対策で使われるいわゆる遮熱フィルムは、このうち日射調整フィルムにあたります。

日射調整フィルムの性能は遮蔽係数で区分されます。可視光線透過率が60パーセント未満のものは遮蔽係数0.40未満がA、0.40以上0.60未満がB、0.60以上0.85以下がC。60パーセント以上のものは0.60未満がD、0.60以上0.85以下がEです。つまり日射をしっかり止めるタイプほど、室内が暗くなる傾向があるというトレードオフが、規格の区分にそのまま表れています。採光が足りていないお部屋では、ここをよく確かめてから決めてください。

一方、はっきりした強みもあります。日射調整フィルムの紫外線透過率は3パーセント以下と規格で決められています。畳や家具、フローリングの色あせ対策としてのフィルムは、規格上の裏づけがある使い方です。なお耐候性の試験時間は内貼り用1000時間に対し外貼り用500時間と差がつけられています。フィルムは半永久的なものではなく、いずれ貼り替えが必要になる消耗品です。

「断熱フィルム」はどこまで断熱してくれるのか

最近は遮熱だけでなく「断熱」をうたうフィルムもあります。JIS A 5759では低放射フィルムとして区分され、性能は熱貫流率で表されます。区分は4.2W/(平方メートル・K)以下と、4.2を超え4.8以下の2段階です。一方、国の先進的窓リノベ2026事業が「高性能な断熱窓」と呼ぶのはUw値1.9以下の窓です。

この2つを単純には比べられません。フィルムの区分はガラス部分の値、Uw値はサッシまで含めた窓全体の値で、測り方の前提が違うからです。それでも桁がひとつ違うことは読み取れます。「断熱フィルム」は嘘ではありませんが、国が断熱窓と呼ぶ水準とは別のものだとご理解ください。

内窓にできること——増えるのは「もう1枚」ではなく「空気の層」

内窓は、いま付いている窓の内側にもう一組の窓を取り付ける工事です。ガラスが1枚増えるだけに見えますが、本質は2つの窓のあいだにできる空気の層です。動かない空気は熱を伝えにくいので、この層が外と室内の緩衝材になります。

沖縄では、内窓のガラスに遮熱タイプのLow-E複層ガラスを選ぶことが多くなります。これを選べば日射にも効きますし、空気層があるので夜まで続く熱の伝わりにも効きます。さらに締め切ったときの気密が上がることで、外の音や結露にも同時に効いてきます。

もちろん、内窓にも弱点があります。開け閉めが1回増えること、掃除する面が増えること、窓辺の奥行きが少し詰まること。詳しくは沖縄の内窓のデメリットをご覧ください。

沖縄の住宅の大きな開口部に内窓を設置した室内の様子

いちばん大きな違いは「夜」に出ます

フィルムと内窓の差がはっきり出るのは、実は日中ではなく夜です。フィルムは日射を減らす部材ですから、日射がない時間帯には仕事がありません。ところが沖縄は夜も外気温が下がらない土地です。日中にコンクリートの壁と床が溜め込んだ熱、そして温まったガラスとサッシから伝わる熱が、夜になってからじわじわ室内に出てきます。

「日中より、夕方から夜にかけてのほうが部屋が暑い」「寝るときにエアコンを切ると、すぐ蒸してくる」。こうしたご相談は、フィルムだけでは解決しにくい典型です。コンクリート住宅が夜に暑くなる仕組みは別のページで詳しく書いていますので、思い当たる方はそちらもご覧ください。

費用と工事の時間の違い

1か所あたりの費用だけを比べれば、フィルムのほうが安く済みます。これは事実ですので、はっきり申し上げます。内窓は部材そのものの費用がかかりますが、工事は思われているより早く、ほとんどの場合1日で終わります。足場も要らず外壁にも触れないので、暮らしながら進められます。

比べるときに見落とされがちなのがやり直しの周期です。フィルムは消耗品ですので、年数が経てば貼り替えが必要になります。10年20年という目で見た総額は、1回あたりの金額だけでは決まりません。当社の内窓の費用の考え方は料金のページでご案内しています。

補助金があるのは内窓、ないのはフィルムです

費用を考えるうえで、無視できない差がここにあります。国の先進的窓リノベ2026事業(令和7年度補正予算1,125億円)の対象工事は、内窓設置、外窓交換(カバー工法・はつり工法)、ガラス交換の3工種と、同じ契約のなかで行うドア交換です。補助の上限は1戸あたり100万円。内窓については、前年度まで対象だったAグレードが対象から除外されるという変更が入っています。

フィルムの施工は、この対象工事に含まれていません。どれだけ高性能なフィルムでも、この事業の補助は受けられません。費用を比べるときは、この差を入れて計算しないと実際に払う金額を見誤ります。

沖縄で使える補助金は補助金のページ、2026年事業の詳細は先進的窓リノベ2026(沖縄)にまとめています。制度は年度ごとに変わりますので、着工前に最新の内容をご確認ください。

フィルムを貼る前に必ず確かめたい「熱割れ」のこと

ここは、ガラスを本業にしている私たちがいちばんお伝えしたい点です。板硝子協会の技術資料によると熱割れとは、1枚のガラスのうちサッシ枠におさまる端部(影で冷たい部分)と、日射を直接受ける中央部分(温かい部分)との温度差が大きくなりすぎ、ガラスの端から割れてしまう現象です。同協会は「熱割れは突然パリンと音がして割れるわけではなく、気づかないうちに割れていることがほとんど」と説明しています。

ガラスの種類によって、熱割れに耐える強さ(許容応力)は大きく違います。同資料によれば網入板ガラスは9.8MPaと最も弱く、フロート板ガラス(Low-Eを含む)が17.7MPa、倍強度ガラスが35.3MPa、強化ガラスが79.4MPaです。網入りガラスは端部の強度が弱いため、熱割れの検討をとくに丁寧に行う必要があるとされています。

同資料は、熱割れが起きやすくなる要因のひとつとして「ガラス面にポスターを貼ったりペンキなどで塗装する」ことを挙げています。日射の吸収を増やしてガラスを局所的に温めるという点では、フィルムも同じ土俵の話です。フィルムの業界団体も、施工前の熱割れ計算をすすめています。

沖縄は鉄筋コンクリート造の建物が多く、防火の理由から網入りガラスの窓が本土より多い土地です。複層ガラスや、すでに小さな傷があるガラスも注意が必要です。いま入っているガラスが何なのかを確かめないまま貼るのは避けてください。割れてしまえば、ガラス代とフィルム代の両方がかかります。(出典:一般社団法人板硝子協会「熱割れとは?」2026年1月)

台風と塩害——沖縄では、フィルムの出番もあります

JIS A 5759には、日射調整フィルムとは別にガラス飛散防止フィルムとガラス貫通防止フィルムが定められており、それぞれショットバッグ試験や鋼球落下試験で性能が確かめられます。台風で飛来物が当たったときに、ガラスの破片が室内へ飛び散るのを抑えるという目的では、内窓はフィルムの代わりになりません。ここは役割が完全に別です。

ただし、台風のたびに雨が吹き込む、サッシがガタついてきた、というご相談の場合は、フィルムでもガラス交換でも解決しません。潮風でサッシ本体が傷んでいることが原因であれば、窓そのものを入れ替えるカバー工法のほうが筋の良い答えになります。

沖縄の住宅で潮風と日射を直接受ける大きな窓の外観

賃貸・分譲マンションでは、選べる方法が変わります

分譲マンションでは、窓ガラスとサッシは多くの場合共用部分として管理規約に定められています。ガラスに直接貼るフィルムは、規約で制限されることがあります。一方、内窓は室内側に新しく取り付けるものですので、専有部分の工事として承認を得られるケースが多くなります。申請の流れはマンションの内窓のページにまとめました。

賃貸の場合は貸主さまの承諾が前提ですが、内窓は撤去して元に戻せるため原状回復の面では有利です。賃貸でできる窓の対策もあわせてご覧ください。

沖縄での使い分け——迷ったときの目安

遮熱フィルムが向いていると思われる方
・数年で引っ越す予定がある
・とにかく初期費用を抑えたい
・悩みが「日中の日射で床や家具が熱くなること」「日焼け・色あせ」に限られている
・台風時のガラスの飛散が心配(この場合は飛散防止タイプ)

内窓が向いていると思われる方
・夜になっても部屋が暑い、寝苦しい
・エアコンが効きはじめるまでが長い、電気代を下げたい
・道路や航空機の音、生活音が気になる
・カビや結露が出ている
・長く住む家で、補助金を使って一度きちんとしたい

どちらでもないケース
・サッシ本体がゆがんでいる、動きが固い、潮風で傷んでいる。この場合は窓ごと交換するカバー工法が答えになります。
・西向きの窓から午後だけ強烈に差し込むという条件では、まず外側で日射を遮る方法(庇、外付けのブラインドやすだれ)がいちばん効率的です。順番を飛ばさないほうが、結果的に安く済みます。

私たちができること、できないこと

マドアーズ!沖縄は内窓とカバー工法を専門にしている窓とドアの工事店で、フィルムの施工は行っておりません。ですから現地を見せていただいて「これはフィルムのほうが合いそうです」と思えば、そのとおりに申し上げます。そのほうが誠実だと考えているからです。

また、「何度下がります」といった数値でのお約束はいたしません。同じ商品を入れても、建物の構造や窓の向きで結果が変わるからです。できるのは、いま入っているガラスの種類と窓の状態を確かめ、どこから手を付けるのが効率的かを順番でお伝えすることです。母体はガラス工事店ですので、熱割れのように後から困る点を先に申し上げられます。

よくあるご質問

Q. 遮熱フィルムと内窓、両方やればもっと効きますか。
理屈のうえでは重ねられますが、おすすめはしていません。既存ガラスにフィルムを貼ったうえで内窓を付けると、あいだの空気層に熱がこもってガラスの温度が上がり、熱割れのリスクが高くなる場合があるためです。すでに貼っている窓に内窓を付けたい場合も含め、必ず事前にご相談ください。

Q. うちのガラスが網入りかどうかは、見れば分かりますか。
ガラスの中に細いワイヤーが格子状または斜めに入っていれば網入板ガラスです。ただし複層かどうか、Low-Eが入っているかは見ただけでは分かりにくいので、現地で確認いたします。

Q. フィルムは自分で貼れますか。
市販品を貼ること自体はできます。ただし、貼る前の熱割れの見極めができないことが難点です。とくに網入りガラスのお宅では慎重になさってください。

Q. どのくらい涼しくなりますか。
数値ではお答えしていません。窓の向き、建物の構造、使う時間帯で変わるためです。現地を見せていただいたうえで、何が効いて何が効かないかを正直にお伝えします。

まとめ|沖縄では「日中だけか、夜もか」で決まります

遮熱フィルムは日中の日射を減らすための部材です。安く、早く、紫外線対策としても裏づけがあります。台風時の飛散防止という点では、内窓にできないこともできます。内窓は日射に加えて、夜まで続く熱の伝わり、すき間から入る湿った空気、外の音、結露まで一度に受け持ちます。費用はかかりますが、国の補助金が使えるのはこちらです。

沖縄県内どこでも、現地の確認とお見積りは無料でうかがいます。フィルムと内窓で迷っている段階でかまいませんので、お問い合わせページからお気軽にご相談ください。いまのガラスの種類を確かめたうえで、いちばん無駄のない順番をお伝えします。